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5.Stepping Wind
一台の車と一台のバイクは、赤く染まった空を目指していた。工業都市ボルクシティ。天空寺院から三日ほどでたどり着くその町に、何をしに行くのだろう。 夕焼けが沈む空を見上げながら、クロノアはジープの助手席で退屈そうに前方を眺めていた。少しだけ遠くにある仲間の影。いや、きっと、恋人と呼んでも差し支えはないはずの相手なのだが。 夕焼けの赤さで、バイクの色がかすんで見える。どこかへ消えて行ってしまいそうな錯覚を覚え、恐かった。 「あと一時間くらいで、ボルク付近の町に到着だ。今日はそこで休むとしよう」 「……うん」 軽く頷いて、クロノアはまた空を見上げた。なんだか今日の空はいつもより暗く、冷たく感じる。それは今の気温のせいなのかもしれないが、大気がどんどん冷たくなっているのは事実だった。 「寒くないかい?そろそろボルク付近は冬支度だそうだ。何か上着を着るといい」 寒いと思った瞬間タイミングよく声をかけてくれるパンゴに感謝しながら、クロノアは貨物部によじ登った。中に入ると若干温かい。開けっ放しの荷物から、朝にガンツが用意してくれていた薄手の上着を羽織る。 簡素だが見る者が見れば一発で高級品とわかる上着は、羽織っただけで随分と暖かかった。生地の厚さも丁度動きやすい程度で、いかにガンツが旅に慣れているかが見て取れた。 上着を着てまたジープの助手席に戻ると、もう街が見え始めていた。 「いい上着だね。自分で選んだのかい?」 「ううん。今朝、風邪引かないようにってガンツが用意してくれたんだ」 不意に質問されて、クロノアは素直に答える。ほお、とパンゴが相槌を打つ。 「そりゃあよかったじゃないか。それはだいぶ値が張るものだと思うよ。大事にされてる証拠だね」 「え…でも、そんな」 何と返してよいかわからず、クロノアは赤面して俯いてしまう。 「クロノアが何と思っていても、きっと一緒に旅をしているうちにいろいろな思い出を作ることが出来たんだろう。随分前にキミたちの出会いの話を聞いたが、普通ならそんな簡単に子供を連れ出すようなことはしないだろう、それも二回もね」 パンゴの言うことはもっともだった。認めたくはないが自分はまだ子供なのだ。連れ出して何かあればそれはガンツの責任になるし、問題にもなる。その責を背負ってまで、ガンツはクロノアを旅に誘った。 「どう感じるかはそれぞれだが、お互いにどう思っているのかは理解できたようだな」 こくんと頷いて、クロノアは嬉しそうに笑った。と、パンゴが車のブレーキを踏む。 「そら、着いたぞ」 気がつけば目の前に街が広がっていた。少し手前にガンツがバイクを止めている。 「今日はここらで宿を探すか。クロノア、疲れたか?」 「ううん、ボクは何もしてないから、全然疲れてないよ?…なんで?」 不意に疲れたか尋ねられ、クロノアは首を傾げる。 「少し目が赤いぞ」 指摘されて一瞬ドキッとした。恐らく泣いてしまったせいで少し瞳が充血したのか。それが眠たそうな顔に見えたのかもしれない。 「あ、うん、大丈夫。心配しないで」 にっこり笑って、何事もないように振舞う。少しだけ心配そうにしながら、ガンツはクロノアの手を引いて、バイクに乗るよう促した。 「――こうじゃねぇと、やっぱり落ちつかねェな」 街中をバイクで走りながら、ガンツはつぶやいた。背後にはパンゴの車が走っている。先程までいなかったクロノアが自分にしがみついていることだけが、先程からの相違点だった。 「……ボク、邪魔じゃない?運転するのに」 「慣れるといないほうが調子狂うぜ」 そうなのかなと呟くクロノアに、ガンツは苦笑した。 正直言うと、先程までかなり運転がしやすかったことは事実だ。 そして今運転がしにくいことも。 そんな事がどうでも良いほど、数時間クロノアがいないだけで耐えられるかがわからなかった。 「……ねえ、ガンツ」 ぎゅうっと、腰に回されたクロノアの腕が、力を篭める。 なんだと返事を返すと、クロノアは一瞬口ごもって、背中に擦り寄ってきた。 「……もし、ボクが元に戻っても…ずっと好きでいてくれる?どこかに行っちゃったり…しない?」 背中をめいっぱい叩かれたような感覚を覚える。息が詰まった。思いがけない質問に、一瞬ハンドルを握る手が緩んだ。 「……バカ。そんな事カンケーねーだろ。オレはお前が誰でも構いやしねェ」 漸くそう答え、ガンツは目的地までたどり着く。バイクを止めてクロノアを下ろすと、駐輪場に手際よく駐車させた。 「とりあえず一番近い宿に出たが、ここでいいか?」 うんと頷くクロノアに、ガンツはよしと頷く。パンゴのほうはどうでもいいようで、振り返れば軽く頷いただけだった。 「ガンツ、ちょっといいかな」 ふと、宿のチェックインを済ませた後にパンゴに呼び出された。クロノアを部屋に送って、また廊下に戻る。 「なんだよ」 「そうツンケンしない。ちょっと聞きたいことがあるだけだよ」 聞きたいこと。何の事だかはわからないが、なんだかあまり聞きたくはなかった。 「……君自身がクロノアにどういう感情を持っているかは別だ。原因を調べて、それから先のことを考えているかい?」 「……先?」 何を言いたいのか訝って、ガンツは眉をひそめる。 「――君とクロノアの関係だ。この先何があってもおかしくないだろう?」 「……チッ。そんなことかよ」 ガンツはフッと笑い、自嘲気味につぶやいた。 「何かあってもそん時はそん時だ。オレは自分のやりたいようにやるさ」 あまりにガンツらしい言葉に、パンゴは一瞬唖然として、そして笑った。 「いや、まったく。変わらないもんだねえ、人間って言うのは。聞かなくてもいいことだったな」 「心配性なところも相変わらずだぜ」 宿の廊下に、男二人の笑い声が響く。別の宿泊客から苦情が来たのはまた別の話で。 「なんか、楽しそう」 扉の外で聞こえる笑い声に、クロノアは耳を傾けた。何の話なのかはわからないが、ガンツだけ呼び出したということは何か重要な話でもしているのだろう。 それが自分のことであるのは容易に想像は付くが、あの笑い声は別の話題に移ったのかもしれない。 しかし、部屋の外まで出て確かめる気はなかった。 車にずっと揺られているのは、思ったよりも疲れるらしい。泣いたのも相まってか眠気が襲う。 「ごはん…いらないや。」 このまま眠ってしまおうと、ベッドに倒れこんだ。洗濯したばかりとすぐわかる、乾いたシーツが身体を覆う。 その感触がなんともいえず気持ちよくて、クロノアはすぐに眠りに引き込まれた。 気がつけば暗い部屋に一人で佇んでいた。 まるで世界から色が抜け落ちたかのようにその部屋はグレーで統一され、寒ささえ感じられた。 窓の外は一面の雪景色。空は、とても黒かった。 白と黒だけの世界。 冷たくて一切ぬくもりのない、風が吹き荒れる場所に、一人取り残されていた。 悪夢はまたしても、夢の中へやってきた。 |
ついに書くことがなくなってタイトルは某曲のパクリです。笑 だいぶぐだぐだになってきてるなーてことで次はエロでも。 ガンツの禁欲解除(死)。 |