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日記短文集1
微妙に違うところで書いたのも混じっている。

001:昔の服
「うわぁ、懐かしいなぁ。小さい頃の服が出てきた」
 部屋で箪笥を整理していたクロノアが、赤い少し古びた服を引っ張り出した。
 テーブルのほうでコーヒーを啜りながらそれを見ていたガンツが、ああそうかと言いながら本のページをめくる。
「まだ着れるかなぁ?ちょっと着替えてくるよ!」
 そんなことを言って、クロノアはぱたぱたと隣の部屋に向かった。一瞬見た感じだと、赤い服のようだった。また子供は派手な色が好きなのかと思った瞬間、そういえば自分も赤い服とバイクを持っていることに気付いた。
「おまたせっ!まだ着れたよ、すごいでしょ!」
「アホ、そりゃ成長してねぇってことだろうが──」
 本のページをめくりながら、ガンツは視線をクロノアに向けて絶句した。
 赤い半ズボンに、上は首輪のような──いや、首輪以外の何者でもない、赤いベルトが首に巻き付いている。
 上着はいっさい着ていないため、素肌は外気にさらされている。
「お前それ、何年前のだ?」
「え?うーんと、たぶん三年か四年は前かなあ?さすがにちょっと小さくなっちゃったけど…」
 首輪を持ち上げながら、クロノアは答えた。そのくらい昔ならこの格好で走り回っていても問題はない。が──
「クロノア、その格好で外には出るなよ?」
「え?なんで?みんなに見せてこようかなって思ってたのに…」
 ガンツがため息をついた。全くこのガキは理解してないなと、手招きした。
「ひゃ!?」
 首輪をつかみ露わな肌に指で愛撫を加えてやると、クロノアはびくりと身体をふるわせた。
「な、なにすんのさ…ひゃあっ!?」
 文句は無視して、ピンク色の小さな突起に指を押しつけた。
「こんな格好して外なんか出たら、こういうことしてくれって言ってるよーなモンだぜ。ン?」
「はにゃ…っ!わ、わかった。出ないよ…だから、ね、やめ──ひゃんっ」
「ダメだ。オレの前でこんな格好して、何も起こらないわけねェだろ?」
 もがいて抵抗するものの、ガンツの力に勝てるはずもなくクロノアは床に組みしかれた。


→初期クロノアはエロい

002:ガンツの場合
 ぱたぱたと走り寄る長い耳の少年を横目に、ガンツは真っ赤なバイクの前でどっしり腰を据え、周囲に散らばる工具をとっかえひっかえしていた。愛用のエアバイクを、こうして定期的に洗浄したり部品を交換したりするのにはもう、そばに来た少年も慣れたらしい。最初はいつも興味津々で眺めるが、そのうち飽きるのかすぐにバイクの周りを歩き回ったり、どこかへ行って戻ってきたりする。
 対して気には留めていないものの、時折見せる仕草や表情に眼を奪われることがよくある。それは二人の関係上当たり前なことなのかもしれないが、ガンツにはそれがあまりにも背徳的に感じられた。
 誰にも公表しない二人の関係は、秘密だからこそどこか危険で淫らに思える。
 そうじゃなかったとしても、純粋に自分に信頼を寄せているだけだった関係を、こうして恋愛に置き換えてしまうこともなんとなく罪なのではと思ってしまう。
 目の前で笑顔を絶やさず飛び跳ねる少年は他人に対してとても甘い。どんなに傷ついても、笑顔を絶やさない。他人が泣くのを許さない。
 今の関係も、彼のそんな優しさで構成されているかもしれないと思うと、ガンツは甘えてばかりの自分に激しく自己嫌悪を感じるのだった。
→通じ合っているようですれ違う二人。ガンツは罪悪感にさいなまれてるといい。

003:クロノアの場合
 かちゃかちゃと機械いじりに余念がないガンツを横目に、クロノアは暇つぶしの対象を探し視線を左右させた。邪魔をする気はないが、どうにも暇でたまらない。
 ついにこの近辺で暇つぶしをするのは不可能と判断して、クロノアはため息混じりにガンツのそばに近寄った。バイクのエンジン部分を整備しているらしいが、クロノアにはどこがどうなっているのかさっぱりわからない。
 ドライバーを持つ手の動きや、真剣そのもののガンツの横顔をなんとはなしに眺めながら、クロノアはさも興味ありげにバイクの周囲を歩き回る。時折目が合うと、自然と笑みがこぼれた。飾ることのない、無意識に滲み出る笑顔なんて、唯一の肉親くらいにしか見せたことがなかった。それまでは外にいるときは常に笑うことを教え込まれたし、泣くこと自体嫌いだった。そんな強情っぱり意地っ張りな自分が、目の前でドライバー片手に熱心にバイクをいじるこの男にだけは、自分をさらけ出した。そしてガンツもまたそうであることに、何となくだが気付いてはいた。
 ほかの誰といるときよりも、ただガンツのそばにいるだけの時間のほうが穏やかな気分になる。それがある種の恋だということをクロノアは理解していなかった。どんなにベッドの上で泣かされても、クロノアには次の日の態度を変に変えたりするほどの恋愛意識が欠け落ちていた。
 ただ一つ、その行為が周りに知れてはいけない、淫らな行為であることだけは、本能的に理解していたのだが。
 どちらにせよ、クロノアはいつか自分がガンツにとって重荷にならないかという事が不安でならないのだった。目の前で作業に専念する男はたいそう他人に甘い。いつか、その優しさが裏目に出やしないかと不安になる。
 このままでいてもいいのか、まだ甘えていたい気がして、クロノアはそんな自分が子供だと痛感するのだった。
→クロノアサイド。まだまだお子様で甘えん坊だけど、本人もそこは自覚してるといい。

004:あたたまる
 雨にぬれたせいですっかりと冷え切ったクロノアを抱きしめて、ガンツはため息をついた。きっかけはちょっとしたケンカだ。ちょっとからかったらむきになって外に飛び出していったクロノアを思わず追いかけたのは、外が土砂降りの雨だったからだ。
 公園のベンチで塗れ鼠になっていたクロノアを、無理矢理引っ張ってつれて帰った。それから一言も口を訊いていない。
 意地っ張りめ、と舌打ちをして、寒さに震えるクロノアの背をさすった。タオルを全身に巻き付けて、肩を苦しそうに上下させるクロノアに、風邪だなと額に手をあてる。微熱を確認して、ガンツはベッドの上にクロノアを押し付けるように組みしいた。
「いい眺めだぜ?水も滴る…てな」
「……っ」
 タオルケットをはぎ取り、衣服といえば下着しか身につけていない身体に手を触れた。恥ずかしそうに顔をそらすクロノアに無理矢理くちづけて、ガンツは意地悪くつぶやいた。
「さみぃンだろ、暖まることしようぜ?」
 部屋にはしばしの間甘い声が響いた。
→個人的ガンクロの理想像=喧嘩ばっかりしてる。

005:ひまわりのなかで
「ったくガキが。またお花摘みなんかやってんのか?」
 草原を彩る向日葵畑のど真ん中。真夏の日差しに平然としながら、ガンツはつぶやいた。
「いいじゃん、帰りがけだし、部屋に飾ろうよ。ねっ」
 ブリーガルへの帰り道、クロノアが急にバイクを止めろと言い出した。その結果はこの向日葵畑。
 さも一緒に暮らしているかのような二人だが、ガンツにとってはブリーガルは故郷でも帰るべき場所でもない。そうわかっていながらも帰るという言葉を使うのは、クロノアの唯一の肉親がそこにいるからだ。風の村の不思議な長老と、その孫の二人暮らしはなんとなく奇妙さすら感じた。父親や母親がいるのかという話は聞いたこともないが、そのうちクロノアが自分から言うだろうと思い聞いていない。たった一人の肉親なら大事にさせてやらなければならないのは、過去の自分の経験からいたく理解していた。
 それを抜きにしてもクロノアはガンツが側にいることを常に望んでいた。村に帰る度にクロノアの祖父はガンツをまるで家族のように暖かく迎えてくれた。その居心地の良さは悪くなかったが、ガンツにとっては本来の自分がどんどん失われていくような不安もつきまとっていた。
「ね、そろそろ行こうか。結構摘んだよ」
 ふと、クロノアはたくさんの向日葵を抱えて戻ってきた。大量の黄色い固まりにガンツは辟易する。
「どうやって持っていくんだ?」
「えへへ、ちょっと持ってて」
 にっこり笑ったクロノアがガンツに花束を渡す。それから、ガンツのバイクによじ登った。
「これでいいよね」
 クロノアが上ったのは、ガンツの膝の上だった。花束を受け取り、花弁の部分が風に当たらないように抱え込んだ。
「運転しにくいな…」
「カタいこと言わない!」
 にこにこと笑顔で出発をうながすクロノアに、ガンツは苦笑してエンジンをかけた。
 ふと、アクセルを入れようとして、ガンツは向日葵の向こうにあるクロノアの頬を片手で包んだ。
「……!!」
 唇が触れるだけのキス。クロノアは驚き目を見開くが、やがて瞳を閉じてガンツの首に腕を回した。

 向日葵の中も、悪い気はしない。
→幸せなひと時はふと気がつけば過ぎ去っている。